chap.1-5　スイカがあるとしましょうか

ＪＲのカードじゃなくて。夏に冷やして塩かけて食べるスイカですもちろん。縁側で種とか飛ばしたり最近はそんな風景も貴重になりました。しみじみしてても始まらないので、本題です。運命の話。分かりやすいようにお得意の図にしてみました。


まあ前回言った運命の流れってこんな感じです。過去→現在→未来って一直線ってわけじゃなくて、ぼやっとした未来からいろんな素材が掃除機で吸い込まれるように集まってきて、ほんで現在でモノゴトが確定すると。確定した現在は後ろにね。過去にね。ぽんぽんぽんぽん吹き出していくわけですよ。積み重なっていくのです。
で、その不確定な未来にはもわっとしたモノゴトを造り出すための砂粒＝素材がたまっていて、そこから必要なものがどんどん集まってきてモノゴト＝出来事になるのです。こんなイメージ。分かるかな？

そこでスイカ。はい。


おいしそうですね、でもこっちじゃなくて。まだ切ってない方のスイカね。それと主人公Ａ君。ではいってみましょうか。Ａ君の体感時間へＧｏ。

「Ａ君夏バテ気味」はい。
↓
「Ａ君夏バテ気味」
「意外に手持ちの仕事が早めに片付いた」はい。
↓
「Ａ君夏バテ気味」
「意外に手持ちの仕事が早めに片付いた」
「今年のお盆は大学の友だちも帰省するらしい」はい。
↓
「Ａ君夏バテ気味」
「意外に手持ちの仕事が早めに片付いた」
「今年のお盆は大学の友だちも帰省するらしい」
「会社のお盆休みが結構取れた」はい。だんだん集まってきた。
↓
「Ａ君夏バテ気味」
「意外に手持ちの仕事が早めに片付いた」
「今年のお盆は大学の友だちも帰省するらしい」
「会社のお盆休みが結構取れた」
「帰省組にはあこがれのＢちゃんもいるらしい」おおっ？
↓
「Ａ君夏バテ気味」
「意外に手持ちの仕事が早めに片付いた」
「今年のお盆は大学の友だちも帰省するらしい」
「会社のお盆休みが結構取れた」
「帰省組にはあこがれのＢちゃんもいるらしい」
「みんなの帰省先には海水浴場がある」おおおおおっ？
↓
「Ａ君夏バテ気味」
「意外に手持ちの仕事が早めに片付いた」
「今年のお盆は大学の友だちも帰省するらしい」
「会社のお盆休みが結構取れた」
「帰省組にはあこがれのＢちゃんもいるらしい」
「みんなの帰省先には海水浴場がある」
「帰省先の叔父さんがスイカくれるらしい」スイカきたっ！
↓
そして現在。「夏バテ回復のはずの休暇が炎天下で海パン一丁スイカ割りをしているＡ君の現実」しかし想いの子の水着姿も見れたからむしろ良し！

これが「運命」。

古いっ！　そのシチュエーションその流れが鼻血が出るほど古いよユウラさん昭和かっ！　って分かりやすいからいーのっ！
てなわけでね。スイカがあなたの未来に素材としてあったとしても、それだけじゃスイカ割りには繋がらないのですよ。あなたの運命にフラグは立たないのです。他のピースがいるのね。普通なら田舎の叔父さんからもらったスイカは台所で包丁で切られて食卓に並ぶ運命なわけで。彼女の水着姿も拝めないルートもあるわけです、運命には。ピースが足らなきゃね。未来の可能性を現実にするには、あるレベルまでそのピースを集めなきゃいかんのですよ。集まったら現実になるのです。いいことも悪いことも。
そうそう、これは単に「スイカ割りができる」ってだけじゃないのよ。こっからＡ君とＢさんの関係はどう転ぶのか。これもまた別のピース次第。フラグ次第。チャンスもあるでしょう。ライバルも居るかもしれない、アクシデントもあるかもしれない、でもこのスイカ割りの一日がピースになって、やがて二人はゴールイン、なんて現実も完成するかもしれないのです。

そうなるとね。このスイカ割りは彼にとって「いいこと」？「わるいこと」？もちろん「いいこと」なんですよ。するとね。それらを作っていたピースもね。

「Ａ君夏バテ気味」
「意外に手持ちの仕事が早めに片付いた」
「今年のお盆は大学の友だちも帰省するらしい」
「会社のお盆休みが結構取れた」
「帰省組にはあこがれのＢちゃんもいるらしい」
「みんなの帰省先には海水浴場がある」
「帰省先の叔父さんがスイカくれるらしい」

これも全部ね。「いいことの素材」なわけです。一番上の夏バテもですよ。この時彼は夏バテだったのです。しかしその夏バテが、憧れの相手とのロマンスに繋がる素材になっているとは。読めないでしょー普通の人は。ね。それが運命の面白いところで、しかし誰にでも経験的に分かることでしょう。アドベンチャーゲームみたい？　いえいえ元々はゲームが現実を真似ているのですから。事実は小説も奇なり、なのです。

ところがね。運命はこれ以上に面白い性質があるのですよ。続きます。